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2015年放射能クライシス

武田邦彦
小学館
お勧め指数 □□□□□ (5)

非常にわかりやすい本だ。
主張している重要なことは次ようなものだと理解した。

福島を中心とした近隣の県では、政府も東電もなんの処置もしなかったために、多くの子供がヨウ素で被曝した。
その影響はチェルノブイリ事故の研究から4年後に現れる。
小児がんという、通常では10万人に一人という珍しい病気というかたちで。
2015年から数年にわたって、多くの被曝した子供たちが小児がんで死んでいく。
小児ガンはとても悲惨な病気で、やせ衰え肌が透明な感じになってなくなっていく。
その人数が福島を中心に数百人にのぼるだろう。
その映像が社会に公表されれば、さすがに原発を推進しようという人の勢いは衰え、日本中の原子力発電は終焉を迎えることになる。
と同時に、日本という国も海外からは「放射線汚染国」として認知され、輸出はもちろん、いろいろなところにわたって、入国管理が厳しくなる。

結局、ヨウ素131防御用に服用するはずだったヨウ素はどこでも配布されず、みんな内部被曝というかたちで吸い込んでしまった。

半減期的に「計測できなくなった」時期になってから、計測を始めた。
すべては保証や責任追及をかわすために国、東電が一緒になって実施したのだ。

このときだけたまたま政府が機能しなくて、今後起こるあるいは今でもいろいろと問題になっているいろいろな物事にたいして「政府が信用できる行動をとる」わけがない。
信用って、そういうもんだろう。

チェルノブイリが異常であって、福島が異常じゃない、ということはない。
放射性物質による内部被曝の影響が、ウクライナやベラルーシの人が受けやすく日本人は受けにくい、なんてこともない。
同じ物理過程が体内で進行するのだから、同じ病状が同じ確率で発生するだろう。
チェルノブイリのときは、住民の移動を子供・女性・男性という順番で数千台のバスで政府主導で脱出させた。
福島の場合は、「安全だ」で乗り切り、除染もしない間に「避難解除」してしまっている。
しかも、ろくな放射性物質のマップを作りもせず、また出来る前に住民を戻してしまった。

つまりは、チェルノブイリよりも厳しい現実が待っている。
それは「予言ではない」。


わかっている現実をどう受け止めるのか。
東京の人も結構な被曝をしている。

福島よりも東京のほうがずっと人口が多い。
ホットスポット的なところで知らないうちに内部被曝してしまうようになった子供がたくさんいるだろう。
確率の問題でいえば、小児ガンになる東京在住の子供の人数は少なくないかもしれない。

冷静になって考えれば考えるほど、すごいことになる。

海洋汚染による漁業被害は、食物連鎖という現実によって必ず起こる。
3月から言われていた。
そして、いわきあたりの海では、プランクトンがかなり放射線量が高く、これを餌にする魚は相当濃縮したものになるのは確実である。
もう、太平洋側日本近海、東北のほうの魚は「食べられない」ということだ。

止められない悲劇について考えることに意味はあるのか。

ぼくは、ある、と思っている。

未来を知ることができるのならば、避けられなくても、知ったほうが良い。
正面から襲われるのと背後から不意うちのくらうのでは、同じ負けでも正面からのほうがよい。
そう、ある種の諦めを感じつつ、この本を読んだ。