著者である岩田健太郎さんは、大の内田樹さんファンである。
この本を読めば、冒頭の一行でそれがわかる。
いや、タイトルだけでもそれが察知されるべきだろう。
内田樹さんのファンではあるが、岩田健太郎さん自身が立派な先生である。
感染症の医師として活躍されている。
日本を代表する、といってもいいのかもしれない(いや、ぼくは素人なので全くわからないが)。
そういう人がどういう本を書いたのか。
これまでの著作とテーマとしてなにが違うのか。
主張されていることは、簡単にいえば、物事に威張って白黒つけるなよ、ということだ。
あれはAです、これはBです。
あるいはこれは良いが、あれは悪い。
はっきりと区分けをすること、もっといえば、白かでなければ黒かという判断を物事に下すことについて、もっと「ためらった」ほうがいいんじゃないですか、という提案である。
物事には白か黒かで分けることができないことが多い。
一般論では皆さん理解されるだろう。
その論の対象が具体的に設定されていないのならば、それに誰も異論は持たない。
しかし一度具体的な問題が起きると、誰が悪い、何が間違っているという話が持ち上がる。
グレーゾーンはすでに犯罪だろう、みたいなトーンの報道がなされる。
発生した問題が白か黒かに分類されることを誰もが心理的に要求し、それがなされるまでは「曖昧に処理された」という気分になれない。
それは病院の中でも、医療行為のなかでも同じであるようだ。
しかし、医療で白か黒かにきれいに別れることなどないようだ。
どっちかに区別することだけで済む話なんて、どの分野でもないのかもしれない。
仮にそうするならば、もっと後ろめたさを持って、つまり「本当は断定できないよなぁ、わからないよなぁ」ということを自覚した上で判断するべきだ。
そういう主張である。
医療関係者ではないぼくには、まぁそうなんだろう、と頷くよりない。
とはいえ、著者が主張されていることは、テレビドラマや小説、あるいはドキュメンタリーの延長線上の想像の上で判断するよりない。
幸いなことに医療にお世話になるのは「歯医者」くらいである。
この場合は虫歯だから削る、程度の判断しかないだろう。
そして、どうしたらいいのか、なんて状況にはあったことがない。
だから、実感をもってそう岩田さんの主張に頷けるわけではない。
人がやること、もっといえば、なんかよくわからないことに対しての態度というものは、似たようなものがあるのだろう。
だから、著者の気分はわかる。
そして、その判断を「もっともなことだ」として頷くこともできる。
というか、著者が内田樹さんファンということで、信用できてしまう。