人々の不安を真っ向から「それは勘違いであり、間違いである」と宣言する本。
福島原発事故で、飯舘村を含めて一般の人の被曝量は、癌になるようなレベルにはなく、また政府が「大丈夫だ」といっている食品を摂取する分には「全く問題はない」と宣言している。
ちまたに溢れる多くの書物は「放射線医ではない、ましては放射線医学が専門ではない人」たちが、根拠が薄い、論拠がない、あるいは、学会では全く定説にはなっていないことを根拠に、やれ小児がんが増えるだの、内部被曝のほうが外部被曝よりも危ないなど、人々を不安にさせるようなことを言っていて、全く困ったどころか、逆に人々を不安に陥れるストレスを生じさせるので、よろしくない。
こう、主張されている。
今回の福島原発の事故により漏洩した放射性物質が原因で発生する小児がんは一人もでない。
こう、力強く宣言されている。
そう宣言させる論拠は、年間100ミリシーベルト以下ではガンは増えない、増えたという症例はないこと。
チェルノブイリのケースは、牛乳に規制がかけられなかったためにそれらを飲んだ子供が10シーベルト(ミリでもマイクロでもない)レベルの被曝をしたためであって、福島の子供たちとは被曝量が3桁違う、などである。
根拠は明確であり、言及したこと、つまりガンは生じないという意味もわかる。
なーんだ、そうだったのか、じゃ、心配する必要ないかな、と思うだろうか。
そうはいえないような気がする。
いくつかの点で疑問に思ったことがある。
まず、小児がんについて。
中川さんによれば、甲状腺がんは5年生存率が高いし、手術もできると言っている。
小児がんになった人でガンで死んだケースはチェルノブイリでも数十から100人オーダであるという記述があった。
この人は放射線医療の人だから、ガンではない、とか、死んでない、とかいう言葉を少し吟味しないといけない。
以前、小児がんでも死んだ人数は少ない、という事実は聞いていた。
が、去年チェルノブイリを扱ったNHKの番組を見た時、「なるほど、そういうことか」とびっくりし、また言葉の勘違いを理解したことがある。
それは、「ガンで死んでない」ということ「五体満足だ」ということは違うということだ。
NHKの番組では紹介された子供たちはチェルノブイリの被曝にあったが、ガンではない。たしかに違う。
しかし、奇形だったよ。
もちろんその番組ではそれを強調してはいなかった。
だから、ひょっとしたらチェルノブイリと関係ないと判断しているのかもしれない。
関係があるのかないのかすら、一視聴者の僕にはわからない。
が、でも、あれは映像にモノを言わせたのだと理解した。
ときたま映る子供の姿の一部が痛ましくて、悲しい気分になった。
僕は「あぁ、そうかぁ、そういうことだったのか、死んでいないということと健康被害がないこととは違うのだ」と理解した。
だから、こういう医者の言うことは、よく吟味しないといけない。
そう思ったのだ。
中川さんによれば、チェルノブイリ以後、汚染地帯に近い人々の平均年齢が有意に下がっているのだが、
これらは「ストレスによるもの」と言っている。
放射能による影響はないのだが、心配してストレスで死んだのだと。
それで平均寿命が5−10年短くなったと。
それはないだろう。
さらに、ガンはタバコをやめたほうがいいとか、交通事故とかそういうほうが危ないとか、
論点を変えようとしている。
だって、そっちのほうが今回の問題よりもずっと「アブいない」因子が大きいから、ということでそう主張されている。
そこでまた先生に聞き合いのだ。
ガンの医者は5年生存率とか、ガンかどうか、とかそういう単位で話をする。
しかし、一般の人はそんな尺度はとらない。
子供はガンになることは殆ど無いのだから、そもそもなるのが「おかしい」のではないか?
助かろうが、どうしようが、10万人に一人のものだろう?
手術で治るというが、「完全に」治るのだろうか?
生活に置いていかなる不便も感じないようになるのだろうか?
さらに、ガンではないけど、いわゆる奇形的な症状は「原発以前と以後とで発生の違いはない」のだろうか?
聞きたいことはもっとあるが、この本の著者は、結局のところ、東大の先生である。
ぼくら普通の人は、もはやあなた方を「東大の先生だからという理由で信用する」なんてことはしない。
むしろ疑う。
あと3年もすれば、いろいろわかるだろう。
医療機関やマスコミが正常に機能していれば、だけど。
それで「全然被曝の影響はでなかった」というのであれば、素人のぼくの心配は全く勘違いだったなぁと知ることができる。
そうなるといい、と心底思っている。
もっとも、そんな検証をする以前に、次の地震で東京は壊滅、ないしは、機能停止していたら、結果なんて
どうだっていいことになるのだが。
不安は不安。
仕方ないので、できるだけ防御して、離れているに限る。
先生方にとっては「サンプル」や「現象」として普通の人の生活があるのかもしれないが、おれらにとってはリアルで、かつ一生に一度の生活なんだ。
ガンかガンでないか、なんてことに集中させ、困ったことや可哀想な結果となるリアルな他の事象から目をそらせようとはしないでほしいなぁ。
どっちにしろ、被害にあうのは普通の人なんだ。
今からでもできることはやったほうが「後悔しない」で済むというものだ。